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岡崎国立共同研究機構の将来構想とE地区への統合バイオサイエンスセンターの設置 分子研リポート1999 | 分子科学研究所

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5-3 岡崎国立共同研究機構の将来構想とE地区への統合バイオサイエンスセンターの設置

5-3-1 統合バイオサイエンスセンター設置計画検討の経緯

(1) これまでの経過

岡崎国立共同研究機構は,これまで機構を構成する分子科学研究所,基礎生物学研究所及び生理学研究所の3研究 所がそれぞれの将来構想のもとで組織の整備を行い,国際的に卓越した研究機関として着実に研究を推進してきたが, 機構全体としての将来構想を検討する取り組みが遅れていた。しかしこの数年,E地区利用の課題もあって,機構と しての将来構想の必要性の認識が高まり,平成8年3月に,岡崎国立共同研究機構将来構想委員会の下にワーキング グループを設置し,このワーキンググループを中心に,平成9年6月に「岡崎国立共同研究機構将来構想」がまとめ られた。その内容は,機構を構成する3つの研究所独自の将来計画と共同歩調をとる形で,「分子生命体科学共同研究 推進センター(仮称)」のE地区への設立を提案するものであった。それは,i) 近年の学問の新しい発展に伴い,物理 学及び化学と生物学・生命科学にまたがる研究領域が出現し,ii) 3研究所の研究者間の交流が自然な流れとして増大 している現状と,iii) 生体の機能発現を個体や細胞レベルのみならず,分子のレベルで解明しようとする研究が活発に 行われ,分子科学研究所との協力の必要性が深く認識されるようになってきたこと,vi) 分子科学研究所においても, 新しい機能を有する分子物質の探索・分子設計に関連して,蛋白質をはじめとする生体分子の構造と作用機構に関す る分子レベルでの研究が盛んになりつつあることが主な理由であった。こうした機構内での動きを受けて,平成 10 年 度には,E 地区で行う研究の柱の一つと位置付けされる脳研究に関連する組織が生理学研究所に認められ,平成 11 年 度には,この分子生命体科学共同研究推進センター構想の第一段階として,基礎生物学研究所所属の研究施設として 生命環境科学研究センターの設置が認められた。

(2) 分子生命体科学共同研究推進センター構想の見直し

上述のように,平成10年12月の大蔵省内示を受けて,「生命環境科学研究センター」の準備作業に着手するとともに, 分子生命体科学共同研究推進センター構想の見直しを開始した。特に,3研究所のこれまでの研究成果を基礎として, 今後展開すべき研究課題の中で,学術的・社会的に特に要請されている分野の検討を行った。

その結果,新設の生命環境科学研究センターの研究課題とともに,時間軸に沿った生命現象(時系列生命現象)研 究の重要性がクローズアップされてきた。更に,バイオサイエンス研究に新たな手法と視点を提供する戦略的方法論 の重要性が再確認された。こうした検討の結果,分子生命体科学共同研究推進センターという名称が,センターの内 容を正確に表現していないとの認識に至った。最終的に,「統合バイオサイエンスセンター」の名称が採用されること になった。

以上のような研究内容・課題の見直しと平行して,3研究所と機構が共同・協力する形で, i) 知覚と生体内情報伝達, ii) 地球環境と生命,iii) 限界を越える構造・機能計測,iv)生体内 NO の化学と生理機能に関するシンポジウムが開催さ れた。こうした企画は,生命環境研究を中心にしながらも,統合バイオサイエンス研究としての位置付けの下に,3 研究所の共同作業として行ってきた。

以下には,「統合バイオサイエンスセンター」構想で提案している「時系列生命現象」,「戦略的方法論」及び既設の 生命環境科学研究センターを統合した「生命環境」の相互の位置づけと,統合バイオサイエンス関連研究との関係を 以下に示した。

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戦 略 的 方 法 論

数理科学 分子科学 物理化学 コンピューター科学 ゲノム科学

植物科学

環境生理学

脳科学

生 命 環 境 時系列生命現象

5-3-2 統合バイオサイエンスセンター設置の必要性

生命現象の本質を,分子のレベルからその集合組織体としての生命体に統合する視点から解明しようとするバイオ サイエンス,すなわち統合バイオサイエンスは,新たな技法の導入により飛躍的に発展を続けており,21世紀に向け て,医療,食糧,環境等の分野で豊かな応用成果を人類にもたらすものとして期待されている。バイオサイエンス研 究については,応用に結びつける研究が急がれていることはいうまでもないが,その基盤としての長期的視野に立っ た学術研究を着実に推進していくことが重要であり,これらの研究を通じて若手研究者を育成していくことは,大学 共同利用機関である本機構の任務である。

癌,先端医療研究等を含むバイオサイエンス分野における重要課題の研究推進が強く望まれるなか,本機構では,生 理学研究所では脳,基礎生物学研究所では発生・分化・再生等の時系列生命現象及び生命環境,更に分子科学研究所 では蛋白質を中心とする生体高分子の理論的な取り扱いに関する基礎研究を展開し,数多くの研究実績を挙げてきた。 本機構では,今回,分子科学研究所,基礎生物学研究所及び生理学研究所が総力を挙げて協力し,これらのバイオサ イエンスの研究課題について,発生・分化・再生等の時系列生命現象研究を中心に分子レベルから統合的に取り組む こととし,我が国のバイオサイエンス研究において,本機構が研究推進の中核的役割を担うものと位置付けている。 このように,本機構の3研究所が共同して発生・分化・再生等の時系列生命現象を中心とする新しい生命科学研究 に取り組むために,機構共通の研究施設として統合バイオサイエンスセンターを設置し,これら研究を格段に推進し ようとするものである。

5-3-3 統合バイオサイエンスセンターの研究目的

統合バイオサイエンスセンターは,発生・分化・再生等の時系列生命現象を中心とする生命科学研究を,分子レベ ルからその集合組織体としての生命体へと統合する視点から行うことを目的とする施設である。化学・物理学におけ る最新の構造論・反応論における研究成果・研究手法を大胆に取り入れ,生体機能分子構造の可視化技術やシミュレー ションを駆使し,21世紀のバイオサイエンス研究の潮流を主導的に形成することを目的としている。異なる学問分野 からの研究者の流動的参入を得て,各レベルからの共同研究を推進するために,扱う研究テーマは5年を目途に弾力 的・流動的に見直し,常に学問的・社会的要請を先取りした独創的研究を推進する。分子科学・基礎生物学・生理学 という異なる領域における最先端の研究をリードする岡崎国立共同研究機構の3研究所の英知を結集し,本分野にお ける国内の共同研究推進の拠点となり,国際的にもバイオサイエンス研究をリードする先端的かつ基盤的な研究セン

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ターとして発展することを目的としている。

5-3-4 統合バイオサイエンスセンターの構成と研究内容

(1) 研究推進上の特色

統合バイオサイエンスセンターは,最先端の分子レベルでのバイオサイエンスを推進する施設である。革新的な 方法論とシミュレーションを駆使し,生命原理を明らかにすることを目的としている。発生・分化・再生等の時系列 生命現象,生命環境,革新的な方法論の開発といった分子レベルから生体システムへと統合する視点から研究を行う バイオサイエンスの展開に当たっては,分子科学・基礎生物学・生理学という異なる領域における最先端の国内研究 をリードする3研究所の英知を結集し,センターに所属する研究者と3研究所の研究者間の活発な研究交流・情報交 換・合同勉強会の開催など,分野にとらわれない形態での研究推進が求められる。特に,従来のバイオサイエンスに 研究のバックグランドを持つ研究者にとっては,化学・物理学的発想で研究を進める関連領域の分子科学者と共同研 究を推進することは,当該領域研究に新たな広がりを持たせ,これまでにない研究展開の可能性を与えるものとなる。 逆に,分子科学に研究の本籍を置く研究者にとって,分子生物学・構造生物学・生理学などの研究者の問題意識や研 究手法を学ぶことで,研究を一層深いものにする大きな助けとなる。このため,可能な限り研究施設は分野の垣根を 越えて共通に設置する。現在,分子科学研究所に所属する電子計算機センターが,これまで分子科学研究に果たして きた役割・機能に加えて,バイオサイエンス推進のための計算機環境を整備し,岡崎国立共同研究機構の直属の研究 施設としての計算科学研究センターへと改組されることは,こうした3研究所の決意の現れでもある。もちろん,3 研究所にはそれぞれの学問分野における国内研究の拠点(COE)としての独自の研究課題に対しても,常に世界をリー ドする成果が要求されていることは言うまでもない。こうした観点から,以下に述べる様に3つの大研究部門のもと に,幾つかの研究課題を推進することを計画した。

(2) 大研究部門の設置 1)時系列生命現象

多細胞生物は,受精後瞬く間に姿形を変えながら生物固有の形態を獲得する。生物個体の生涯における形態変化の 共通性や種による特異性を記載し,個体の発生原理を明らかにすることは生物学の最も重要なテーマのひとつである。 近年,ショウジョウバエを用いた遺伝学から,形態形成を制御する遺伝子が次々に単離され,それらの多くは,ヒト も含めた多様な動物種に共通して用いられていることが明らかになってきた。生物における普遍的な発生原理の解明 は,生物多様性の解明と表裏一体であり,生物進化の謎を解く鍵となると考えらる。従って,このような問題を学際 的基盤のもとにアプローチすることが21世紀の新しい生物学が目指すべき方向である。発生を分子レベルで理解する ことは,それぞれに特殊化し個体を獲得した細胞で特異的に発現する遺伝子を明らかにし,その組織特異的な発現の 制御機構を探ることである。しかし,現在では組織特異的遺伝子発現を制御するDNA配列には多くの因子が複雑に相 互作用していることがわかっている。発生の仕組みを理解するためには,これら細胞の個体を決定する遺伝子が,発 生過程のいつどこで発現しどのように他因子と相互作用してその機能を発揮するのかを遺伝子プログラムとして理解 する必要がある。そのためにはマイクロアレイ法など最新技術の導入や発現プロフィールから生物学的意味を抽出す るための生物情報学の協力は不可欠である。

このように発生・分化の制御機構を遺伝子発現のプログラムとして理解する試みは生物の神秘的な能力のひとつで ある組織や器官の再生現象の分子機構を探る上でも非常に重要である。また,「動植物の細胞のうち全能性をもつ細胞

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の特性についても遺伝子が重要な鍵を握ると考えられる。細胞の 全能性を規定する遺伝子を明らかにできれば,幹細胞の特性を解 明できるのみならず,組織・器官の再生を人工的に制御すること も可能になるであろう。

2)戦略的方法論

新しい学問領域は,新しい方法論の発見・発明によりスタ−ト することが多い。例えば,現在医学の診断に幅広く使われている 磁気共鳴イメ−ジング(MRI;Magnetic R esonance Imaging)は,も ともと分光装置として誕生した磁気共鳴(NMR)から生まれた。 更にその中から,脳科学の究極計測法として機能イメ−ジング(f‐ MRI; functional MR I)が近年開発され,脳研究が人を対象として 飛躍的に発展した。

このように,各分野の学問分野の急速な発展の裏には新しい方 法論の発見がある。その方法論が根本的であればあるほど,新し い分野を活性化し,それがまた新しい方法論を次々に生み出して 発展して行く。こうした革新的方法論は,単なる個別技術を超え た戦略的方法論と呼ぶのがふさわしい。

統合バイオサイエンスという新しい学際領域は,融合という領 域間の単純和の方法で確立し得ない困難さを持っている。また,複 数領域が集って,短期集中的に同一テーマの問題解決を図るプロ ジェクトタイプの研究手法でも不充分である。統合バイオサイエ ンスでは,領域全体を引っぱる新しい方法論のブレークスルーが 必要となる。すなわち,従来の方法では見えなかった1分子レベ ルの3次元構造解析,分子レベルの機能の入出力関係解析,複雑 系のその場の機能観測などを明確に開示する戦略的方法論が期待されている。

例えば,複素観測法を用いた発生,分化,再生過程の分子的可視化,生体内情報伝達の分子機構,大規模な多体系 全体をシステムとしてとらえるシミュレーション,生命現象の数理モデル樹立のための実験/シミュレーション対応 システムの開発などは,これまでにない視点からの方法論の開拓なしには達成できない重要な研究課題である。

こうした研究は,ハイリスクのため従来サイドワークとして通常研究の陰で細々と開発が行われてきた。しかし,セ ンターでは,リスクを覚悟でこの方法論自体の開発を正面に据え,共同研究者の総力を挙げて体制を作りたい。 3)生命環境

人工的に作られる何百万種の化学物質のほとんどが,かつて生命体の出会ったことのない物質であり,それがもた らす人体等への影響は,多くの公害事例で明らかになった(例えばスモン病や有機水銀中毒)。しかし,人体の活動調 節に必須である化学物質の類似物質が微量で多大な影響を与えることは,予期せざる未知の出来事であったと言える。 この問題は,まずホルモン作用という意味で生理学の問題であるが,それが環境中にわずかしか存在せず,しかも影 響が大きいという意味で環境応答生物学でもあり,生物濃縮されて影響を与えていくことから環境生態系・循環系の 研究にもつながっていく。また,ホルモンとの類似性の研究という意味で,物質科学の対象にもなる。さらに,生殖

研 究 部 門

題     課     究     研

時 系 列 生 命 現 象

ム ラ グ ロ プ 生 発 胚

ム ラ グ ロ プ 生 再 官 器

・ 織 組

子 分 の 生 再

・ 化 分

・ 生 発 の 胞 細 経 神

構 機

構 機 子 分 の 性 能 全 化 分

戦 略 的 方 法 論

分 子 分 の 程 過 命 生 る よ に 法 測 観 素 複

発 開 の 術 技 化 視 可 能 解

構 機 子 分 の 達 伝 報 情 内 体 生

シ ム テ ス シ る す 関 に 系 体 多 な 模 規 大

ン ョ シ ー レ ュ ミ

の め た の 立 樹 ル デ モ 理 数 の 象 現 命 生

テ ス シ 応 対 ン ョ シ ー レ ュ ミ シ

/ 験 実

発 開 の ム

生 命 環 境

: 明 解 の き 働 の そ と 質 物 乱 撹 泌 分 内

り わ 関 の と 化 分

・ 生 発

発 開 の 応 反 学 化 型 応 適 境 環

構 機 応 適 境 環 の ー サ ン セ 子 分 オ イ バ

築 構 の ス ー ベ タ ー デ 体 生 境 環

(5)

ホルモンの働きを乱すことは脳で作られる性殖腺刺激ホルモンと関係する。すなわち内分泌撹乱物質は,脳・物質・環 境の3つのキーワードすべてに関わる問題である。したがって,それら複雑領域の協力なしに解明し得ない新しい問 題と言える。このように,真の新しい境界領域を研究することが,統合バイオサイエンスの使命の一つである。

(3) 各大研究部門の研究課題 1)時系列生命現象

胚発生プログラム

胚発生は,細胞増殖,分化を司る遺伝子が厳密に制御されて発現することによって進行する。これまでに発生過程 における遺伝子発現プロフィールに関する解析は,時間軸および遺伝子についての断片的な情報があるのみである。本 プロジェクトでは,最近開発されたマイクロアレイを用いた発現プロファイリングを駆使して,胚発生に関わる遺伝 子発現プログラムを網羅的にまた詳細に記載することにより生物の胚発生プログラムを解明する。

組織・器官再生プログラム

再生現象は,肝臓やイモリの水晶体(レンズ)の再生でよく知られているが,その様式は生物種や組織,器官によっ て実に多様であり,細胞の脱組織化,増殖・分化,再組織化を経る再生や未分化な幹細胞からの再生などが知られて いる。特に,発生生物学の最近の進歩によって,幹細胞の実体が確認され,それらの性質も明らかにされつつあるが, 多くの組織では組織・器官の再生を人工的に制御するにいたっていない。本プロジェクトでは,各種臓器・組織の幹 細胞の特性を明らにするとともに,器官の形態形成における細胞相互作用の制御機構を分子レベルで解明することに より,緊急な社会的要請にこたえる。

神経細胞の発生・分化・再生の分子機構

神経幹細胞よりの神経細胞の誘導・分化・極性形成機構さらには神経回路の特異的結合の形成,神経細胞の維持,及 び損傷後の軸索の再生と機能の再構築に関わる分子群とその機能を形態学的な観点から調べると共に生理学的手法を 用いて機能の面からもアプローチする。そしてそれらの発達・加齢に伴う変化とその原因を探る。

分化全能性の分子機構

植物細胞は脱分化・再生能が高く,1963年には既に,ニンジン体細胞からクローンを作る技術が確立している。し かし,脱分化・再分化には植物ホルモン,細胞壁糖タンパク質,染色体・ゲノムの修飾などが関与していると考えら れているが,分子機構の実体については未知である。本プロジェクトでは,脱分化・再分化に異常をもたらす突然変 異体の解析から,分化全能性の新たな研究展開を目指す。

2)戦略的方法論

複素観測法による生命過程の分子分解能可視化技術の開発

複素観測法は,岡崎で生まれた波動現象の革新的観測技術で,従来の可視化計測法の分解能とコントラストを大幅 に改善する。この方法を光学顕微鏡,電子顕微鏡に適用し,発生,分化,及び再生過程の細胞内分子機構を生きた状 態で高分解能観察する。さらに抽出サンプルのDNAやタンパク質について1分子配列解析,立体構造解析法を確立し, 分子生物学と構造生物学を細胞という現場でつなぐ統合的方法論の開発を行う。

生体内情報伝達の分子機構

生体外からの様々な刺激に伴う血管や筋肉の弛緩などの命令情報は,一酸化窒素(NO)の拡散などにより伝達され, NO がヘムタンパク質に結合することにより,応答へと展開される。こうした情報伝達物質の作用機序を,分子分光学

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の方法論を駆使することで,解明する。

大規模な多体系に関するシステムシミュレーション

第一原理分子動力学の手法を,生体関連分子に適用するための電子状態計算分子動力学計算を融合したアルゴリズ ムを開発し,大規模並列演算用のソフトウエアを構築する。これらを用い,蛋白質,核酸等の生体高分子の構造と機 能,及び反応ダイナミックスの研究を行う。

生命現象の数理モデル樹立のための実験/シミュレーション対応システムの開発

幹細胞から決定された細胞へと分化・多様化していく発生・再生過程を分裂・増殖を基本とする複雑適応系(自己 生成系)ととらえる新しい数理モデルを樹立する。そのモデルをもとにコンピューターによる構成的シミュレーショ ンを行いつつ,現象の本質的記述と根元的パラメータを探索し,より現実的なモデルの確立を目指す。

3)生命環境

内分泌撹乱物質とその働きの解明:発生・分化との関わり

自然界に放出された種々の化学物質が,生殖などの基本的生命現象に及ぼす影響が問題となっている。これらの影 響を,レセプター型転写因子の機能との関係で検討する。

バイオ分子センサーの環境適応機構

環境の物理的・化学的変化を生体は,すべてセンサー分子で受容し,その情報が体内の各器官・中枢に伝達される ことによって認識される。例えば,光センサーから視覚中枢及び体内時計機構へ,温度センサーから体温調節中枢は, ガスセンサーから呼吸中枢へ,NaC l センサーから体液量調節機構へと情報は伝達・処理される。これらの情報が生体 の中で統合されることによって,すべての生体は環境の変化に対応することができる。これらのセンサー受容・伝達・ 認識・統合・適応メカニズムを解明する。

環境適応型化学反応の開発

化学反応は,複数の異なるプロセスで進行する場合が多い。このため,個々のステップでの単離精製に有機溶媒な どの大量消費が含まれる。したがって,ワンポット,あるいは酵素の利用による新たな反応手法の開発を行う。 環境生体データベースの構築

生物あるいは生体分子を扱う分野では,今後,遺伝子・タンパク質等の構造と機能及び生体に作用する化学物質に 関する最新の情報の取得が必須となる。そのため,環境生体データベースを構築し,それを利用した大規模シミュレー ションにより,生体と化学物質との相互作用を分子レベルで解明する。

5-3-5 統合バイオサイエンスセンター設置へ

これまで述べてきた統合バイオサイエンスセンター設置計画は,平成12年12月の大蔵省の内示で設置が認められる 運びとなった。それと同時に,電子計算機センターは機構共通施設である計算科学研究センターとして整備されるこ とになり,助手一名の振り替えによる教授ポジションが新たに認められた。機構共通施設には,現在基礎生物学研究 所と生理学研究所が共同で利用している動物実験センター・アイソトープ実験センターの二施設も含まれている。さ らに,平成11年度に発足した生命環境科学研究センターで提案していた3課題を実施するための研究施設として,E 地区への 5,130 m

2

の研究棟の設置が認められた。

現在,統合バイオサイエンスセンターで第一期として取り上げる研究課題の見直しや,機構共通施設の運営等の問 題を検討するための準備委員会が設置され,活発な議論を行っている最中である。

参照

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